債務整理 【事務職員能力検定試験】vol.9
今回は破産手続・債務整理(清算・債権)について個人的におさらいします。
前回はこちら↓
kouninnkaikeishi.hatenablog.jp
・利息制限法:20%を超えると刑事罰(グレーゾン金利が生じていた)
過払金返還請求権は最後の返済から10年で時効(ブラックリストにのらない)
・消費貸借契約(民587条)
借入先を覚えていない債務の調査は(個人間を除き)信用情報の調査が有効
債務整理
【個人】
任意整理・自己破産・個人再生・特定調停
【法人】
清算型(破産・特別清算)と再建型(民事再生・会社更生・任意整理・特定調停・事業再生ADR)
任意整理:強制力がなく、ブラックリストに5年登録される。
未払賃金立替制度:8割が独立行政法人労働者健康安全機構から立替払いされる。
要件:1年以上事業活動。法律上では破産管財人による、事実上では労働基準監督署の認定。また労働者が、破産等申立認定申請日の6カ月前の日から2年の間に退職したこと。
※年齢に応じて限度額有、ボーナスと2万円以下の場合は対象外。
破産手続
破産と免責の裁判2本建て。
添付書類:収入証明2年、給与証明2か月、決算期2期分
申立権者:破産者と債権者
管轄:債務者の住所・主たる営業所所在地の地裁(債権者数が1,000人以上は東京か大阪地裁)
手数料:自然人(破産1,000円、免責500円)法人(破産のみ1,000円)
要件(破産15.16条):人(支払不能)法人(支払不能又は債務超過で、同時廃止はほぼない)
免責許可申立(破産248条):担保不動産競売手続は効力を失わない
・免責不許可(破産252条):浪費・過去7年で免責歴有、非協力的、隠蔽、換金
裁判所の裁量もあるため、該当しても許可を受けられることがある。
・非免責債権(破産253条):租税・夫婦間・労働債権・秘匿債権・罰金
↓
15条2項:破産者が支払を停止したときは、支払不能と推定。
受任通知を弁護士が出すと、直接請求が止まる(貸金業法)
※債務整理事件処理の規律を定める規定を日弁連が2011年に施行
→対面による面談必須・過払金返還請求の選り好み禁止で、全ての債務支払督促と訴訟の期日を確認すること。
相殺禁止(71条3項):借入のある銀行に受任通知を出すと引き出せなくなる。あらかじめ給料・年金を借入のない銀行に変更しておく。
破産管財事件
通常管財の他、少額管財(債権調査は留保)は少額の予納金(20万ほど)+60万円未満で債権者が50人以下の時行える。
予納金(官報公告費用と管財業務遂行費用)は債務者の財産の中から捻出。
財産が予納金以下だと「同時廃止」
・破産手続決定以降の新得財産は合計99万円以下は自由に処分できる。
(拡張申立は開始決定から1か月以内。)
・免責を受けると
42条 個別的権利行使の禁止(担保権の実行は止まらない)
44条 破産財団に関する訴えの中断
81条 郵便物の転送
37条 居住制限
41条 重要財産開示義務
他 資格制限
・配当(振込による実施)
優先順位は以下の通り。
財団債権(予納金、3か月前給料・賞与・退職金、1年未満の租税)
優先債権
一般債権
劣後債権
※簡易配当:1,000万円未満で中間・同意・追可配当を行わない
最後配当は書記官の許可・公告等の手続必要
管財人業務
裁判所に管財人の印鑑届出をして管財人口座を開設し、財団組入金を受領する。
→預貯金・保険に関して、解約書と通帳がない場合は取引履歴書の交付依頼もする。
・換価対象となっている不動産・自動車の保険は換価してから解約する。
・破産者が生命保険契約の継続を希望している場合、解約返戻金相当額を破産財団へ組み入れる
・出資金は信用金庫に対して行う。売掛金は費用対効果で、裁判所に訴訟提起の許可を求めるか破産財団から放棄するか選択
【事件記録】
チェックポイントは以下の3点
- 賃貸不動産・リース物件の有無
公租公課の滞納・差押登記の有無
別除権(優先に弁済を受けられるもの)つき不動産の任意売却
破産108条:別除権者は、不動産の任意売却によって「不足額責任主義」を行使できる
破産198条:別除権者は管財人に対して担保不足額の証明をして配当に参加する
→組入額の交渉は10%の割合からスタート
後順位への対応は、ハンコ代又は判付料の金員(10~50万円)で抵当権抹消を協力してもらう
不動産の評価額<被担保債権:無益な差押えとして解除
- 自動車の有無
自由財産拡張として、破産財団から離れ日の受領書をもらうこと
売却時は、査定価額以上の金額で登録名義の変更を忘れずに
価値がなくとも自動車税を減らすために1万円程度の低額で登録名義変更・又は廃車手続をした上で解体処分をする
(所在不明の自動車の時は裁判所に放棄許可申請をし、減免申請や課税取消の申請)
自動車評価額<ローン残債務:車検表上の所有者名義(販売会社・クレジット会社ではない)に返す。
- 換価に際し元従業員の協力
換価・放棄する場合、原則として100万円以下の財産の許可不要で報告のみ。
否認権の行使
破産開始前に逸出した財産を回復させる権限(破産160.162)
→発見したら任意交渉か訴訟
配当の行使
直近の日曜までに発送した通知は、一律に翌週水曜午前0時をもち到達したとみなす
↓1週間以内に
到達した旨の届出を出し、受け取った裁判所の翌日から除斥期間の起算日となる
・異議期間を経過すると配当表の更生はできない
任務終了集会:任務終了に伴う収支計算報告書
個人再生手続
債務の減額・住宅の確保・免責不許可事由がない。債務はなくならない。
※民事再生手続では債権者の利益を保護するため、破産手続による配当金以上の弁済「清算価値保障原則」がある。公平誠実義務
申立資格
・再生債権額が5,000万円未満(クレサラ2,500万住宅ローン3,000万までは除く)
・再生債権には再生開始日の前日までの利息損害金を加える
※住宅資金貸付債権に関する特例(6カ月以内に申立)
自己の居住住宅であること・代位によって取得したものでない・住宅ローン以外の担保が設定されていない・住宅資金特別条項を記載した再生計画案を提出
①小規模個人再生手続(再イ)
債権者の2分の1+債務額2分の1以上の賛成が必要。
効果:再生債権者に原則弁済禁止・破産が出来なくなる・自身の財産の管理処分権を失うことはない。
②給与所得者等再生手続(再ロ)
可処分所得の2年以上の額を返済する計画
【債権者の同意なしで良いが以下の条件有】
過去7年で破産の経験なし
年収の5分の1以上の変動なし+原則3年(最長5年)弁済原資の収入が得られる人